海をのぞみ、景色を取り入れた平屋
益田市という場所は自然に恵まれた地域である。その自然を享受し豊かな暮らしがしたい、そんな想いから始まった平屋であった。サーファーが集まる海岸を見下ろす場所に建てられたこの家は、いかにその景色を取り込んでいくかが問われていた。海に向けて長手方向に配置し、前面をガラス貼りとし海の景色を十分に取り込んでいくことも考えられたが、短手方向を海に向け特注最大寸法のFIX窓をピクチャーウィンドウとし海へと向けさせた。このことにより、最も良い景色が切り取られ、自然と視線が窓の奥へと吸い込まれるように仕向けている。また、冬の日本海の厳しさから、全面が開口で空いていると雨風の影響をもろに受けてしまうことから、開口部をしぼることにより安全性も確保する狙いとした。
玄関
家自体の階高を2100㎜と抑えることにより、身近な感覚を来た人に与えてくれるスケール感となり、親しみやすさを演出している。玄関ドアは断熱木製サッシとし、ガラス開口を大きく設けることにより、海の景色が少しだけ垣間見える。このドアを開けた先には、パノラマの景色が広がっているが、その期待感を与えながら家に入っていくように演出されている。
ファサード
この家にはファサードは無く、そっと横からアプローチする配置計画となっている。奥へと進むと、海は全く見えない壁に囲まれた空間へと誘われていく。それは、家に入った時に見える絶景をより強調して感じてもらうための操作の一つなのである。設計という行為は、ただ機能をまとめることではなく、利用する人の感情の動きやストーリーを演出する行為でもある。
外部と内部が緩やかにつながる
外壁の素材が内部へと侵入してくることにより、外部と内部の境界があいまいになる。
家という囲われた中で生活していくうえで、外への開放感をいかに獲得していくか、それは非常に大きな課題であるが、素材や、開口の大きさや袖壁・垂れ壁の有無で開放感に大きく影響することはとても重要な事項である。
海を感じる
ー景色に敵う豊かさはないー
火のゆらめき、波のさざなぎ、木々の木漏れ陽、自然の景色に勝る豊かな時間は人工で作り出すことはできない。では、いかに自然の景色を内部に取り込むことができるか、それが重要になってくる。海の見えるこの土地では、ダイニングで寛ぐ時間、玄関を開けて帰ってきた瞬間、眠りから目覚めたその時には、かならず海が目に入ってくる。常に自然を感じられることは、生活を豊かにしてくれるための重要なピースなのである。
寝室からの眺め
寝室兼書斎。耐力壁であるブレースの部分を可動棚にし、本で目隠しとしている。また、書斎の机から天井までを大きな開口とし、ここからも海を眺めることができる。
ウッドテラス
ウッドテラスでは、子どもがプールで遊んだり、家族で食事をとったり、友人と焚火をしてお酒を飲んだりする空間になっている。ここに座ると海の絶景をみながらくつろぐことができる。
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