大屋根の家
一枚の大きな屋根が必要な勾配で存在している。その大きな屋根が家の表情をつくり、空間をつくり、人の生活を守る。この家のシンプルで凛とした佇まいは、この屋根が造り出しているといっても過言ではない。家づくりはそこに住む人の生活から生み出されていく。その生活は効率を求め、常識を求め、予算を求める。多くの条件の中で家は形作られていくが、家の骨格だけは間違えることが許されない。遊び心、おおらかな時間の捉え方、人を大切にしたいという施主の想いから、この大屋根の骨格ができあがり、そのまま暮らしへ、家の表情へとつながっていった。この屋根のように、おおらかで豊かな暮らしが展開されていくことを望んでやまない。
シンプルなファサード
大屋根のホワイトのボリューム、入口を示唆する小さなブラックのボリューム、内部を思わせる板張りの軒下空間、骨格と素材とでこの家のファサードを構成している立面は、シンプルでありながら凛とした佇まいを実現している。
大屋根下の空間
大屋根が造り出した内部空間は、大きな勾配天井の居間。そして勾配が上がっていった先には、ロフトのような2階空間が存在し、趣味部屋にも子どもの勉強部屋にもリモートワーク場所にもなる空間となっている。開放感は維持しつつプライバシーも確保できるようスラブレベルの操作を行っている。この大屋根の骨格は、この様々な機能を有する大空間を創り出すための計画でもあった。トータルで検討する難しさと面白さがこの空間に凝縮されているように思うのである。
階段
シームレスで梯子のような階段。大小さまざまな造作物が家の中には存在しているが、空間を邪魔しないよう細部まで検討されている。
中庭を囲むL字の開口
中庭へ向けて大きな開口が連続している。開放感と明るさを取得しているのに加え、プライベートな庭とつながる暮らしが創造されていく。
キッチンダイニングと坪庭
大空間の中にキッチンダイニングがそっと配置されている。ここにいると全ての生活が一体となって融合していく感覚になる。そして屋根勾配が下がっていった先には掃き出し窓越しの坪庭が。どの角度を向いてもそこには適切な開口と植栽が配置されている。そのことにより常に外が感じられること、また目線が外まで向かって行くことにより開放感を感じることができる。
階高を操作したリビング・2階
大屋根の勾配も、様々な検討の後に決定されている。内部のリビングの上に2階がのっている形だが、それぞれ天井高さは2mと設定されている。それは窮屈すぎずにこもった空間を創り出す天井高さである。玄関→リビング(天井高2000mm)→大空間とつながる動線がより開放感を感じさせ、そして大空間→2階(天井高2000mm)への動線はまたこもった空間へと階段を上っていくワクワク感。そして小窓から顔を覗けば皆が寛ぐ大空間がそこにある。
大空間のLDK
大空間を一望する。2階の小窓、全体を程よく照らしだす照明計画、勾配天井による開放感がうかがえる。
2階の趣味部屋
2階の空間。壁一面が本棚となっている。また、大空間面へ向けてスタディカウンターが設置されており、壁を挟んで集中できる空間となっている。時には横の開口から大空間を覗くこともできる。
2階の趣味部屋
振り向くと小さな小屋裏部屋が。ここは当初は収納部屋となるが、子どもが大きくなった時には個室に、また大きくなって出ていったときには収納部屋へと戻る。時代に合わせた使い方を可能にしている。
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