街へとつながる土間空間のある、2世帯が暮らす平屋住宅
町屋造りが立ち並ぶ場所に、古くなった実家を建て替える計画をしたい、それが最初の出逢いでした。かつては写真館として街と人の歴史をレンズを通して紡いでいたこと、建物としてもかなりの歴史を改修・増築を重ねながら次世代へと繋いできたこと、この建物にはとても長く深い時間の連なりが刻まれていました。特に大事にしたのは、「空間性の継承」「公共性」この二つでした。町屋特有のワクワクとする迷路性、家が隣接する連続性、内部と外部が繰り返される複雑性等、元々あった建物の持つ空間性を継承し歴史性を紡ぎたいと考えました。また、外皮外内部の土間空間は招いた人々とここに住む家族が繋がる「公共」の場になります。写真館の持っていた公共性を引き継ぎながら、この家は再び街の一部となり愛されていくはずです。プライベートな「私」の空間と、公共性のある「公」の空間をグラデーションで緩やかに繋げながら、ここに暮らす家族だけの充実と、社会へと接続し街の発展へ繋げたいという想いが込められた2世帯の平屋住宅が完成しました。
連続するボリュームの連なり
それぞれの機能を持つボリュームを連続性を持たせた外観としたことにより、伝統のある町屋造りが立ち並ぶ街並みになじむような計画としました。
深い軒のあるファサード
軒下がりのファサードとなることで町屋の町並みと同化していきます。来た人を雨から守ってもくれますし、ゆとりを持った玄関先の空間はおおらかさを感じさせます。袖壁や耐力壁が出たり入ったりすることも、この家の複雑性と連動していき、建て替える前の実家を連想させます。
公共性のある土間空間
土足で出入りできる土間空間。薪ストーブも備えており、客人をここに招き様々な活動が行われていきます。家の一部に、街の人々とつながる空間があること、それはまさしく町屋造りの古き良き習慣ではないでしょうか。
開放的な内部空間
外観からはボリュームが連続していて、それぞれが分断されているようにも見えますが、中に入るとそれぞれが緩やかにつながり開放的な内部空間が広がります。切妻・平入りの形を利用し、屋根勾配を生かした勾配天井の空間が、庭へと抜けていく方向性と、空間のリズムをつけてくれています。
2世帯を包む現代・和の空間
2世帯の動線がこのLDKJでつながります。和の材料、畳の空間など、以前の風景を継承しつつ、効率的で一体的な現代の間取りが家族の距離感を調整できる空間を創り出しています。
相対する母屋
リビングから外を眺めると真正面に離れが相対しています。古い実家を解体する中で、一つある離れはそのままにしています。現在はご両親の住まいでもあり、将来はカフェのような利用方法も考えられると、施主は話します。ポジティブに現代の問題へ向き合っているその姿は、この家の計画とばっちり重なっていました。この相対する離れが、未来と過去の時間の流れを想起させ、これからの活動を見守ってくれているようでした。
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