猫と家族の暮らす家

島根県益田市の平屋の注文住宅

シンプルな中に動きのある外観。窓や設備機器を一切設けない計画も、このシンプルさを創り出す要素の一つです。

道路の隅切形状に合わせて建物の形を作っています。既にある街の条件を計画に盛り込むことで、違和感のない、周囲に調和する建物になっていくはずです。

行燈は日本独自の照明装置で、障子で囲まれた蝋燭照明として非常に落ち着いた光を与えてくれます。この和室は、時には大きな行燈の機能も果たします。

障子を開け放したLDK空間。すっきりとした内観を可能にしているのは、家電収納機能をパントリーに内蔵したことや、ごろんと横になれる和室が併設しておりソファーなども置かなくても良い平面計画があるからこそです。開放感のある空間は単に大きさで確保していくのではなく、ものの置き場所や可変性のある間仕切りなど、時と場合に合わせた空間の自由さが大きく影響しています。

小さな洗面室。しかしながら縦長のスリット窓から差し込む木漏れ日が豊かさを与えてくれます。

家電収納機能を内蔵したパントリー。そこは一見窮屈な空間になりがちですが、横長のスリット窓により坪庭の緑を感じることができます。坪庭は外観を創り出すためだけのものではなく、内部からの開放感や揺れる木漏れ日が差し込み豊かさを与えてくれる装置でもありました。

玄関土間には猫用の外見窓が計画されています。猫の寝床横に計画されたこの窓は、猫が外を眺めるためでもあり、玄関を明るく照らす明かり窓の役割も持っています。また、猫が壁紙を破ってしまわないようにこの家は漆喰で仕上げられています。漆喰の持つ独特の凹凸が、自然光や照明に柔らかい陰影を創り出し、優しい内部空間を演出してくれています。
この家は小さな窓を効果的に適所に配置することで、開放感や心地よさを獲得しています。猫や暮らしを微視的な目線で検討していく開口計画が、このコンパクトな平屋を気持ち良い空間へと昇華しています。

周囲から見られる状況。24坪に抑えられたコンパクトなボリューム。道路に囲まれた敷地形状。それらの諸条件を、坪庭、植栽、開口計画、障子により軽やかに解決していった建築計画。猫も気持ちよく暮らせるように、来た人を心地よく迎え入れられるように、街との良好な関係を築けるように、そして快適で気持ちよく暮らしていけるように。そんな施主の想いが実現した24坪の平屋は、一つ一つの丁寧な計画と施主の想いから成り立っています。